溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
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守谷会計事務所に着いて朝の挨拶をするなり、守谷が「優花さん、優花さん」とデスクから手招きをする。
なにかと思いながら守谷の元へ行くと、A4サイズの用紙を何枚か渡された。
「前に言ってたアパート、いくつか候補をもらったからどうかと思ってね」
その紙を見てみれば、守谷の言うように部屋の間取りと値段の書かれたものだった。
以前、不動産屋を紹介してもらう約束をしたままだったことを思い出す。
「ありがとうございます。助かります」
亜衣のところにいつまでもお世話になっているわけにはいかない。今週末にでも物件を見させてもらって、早いところ決めよう。
「さてと、私はこれからトライリンクさんへ行ってきますよ。優花さんも同行する?」
「あ、いえ、私はこちらでの仕事が残っていますので」
守谷なりの気遣いなのだろう。優花は、片瀬とのことを応援してくれている守谷と喜和子には、まだ別れたことを話せずにいた。
片瀬の方も、優花に守谷にのこのこついてこられたら迷惑するだろう。
いや、片瀬だったら、そこは何事もなかったかのように振る舞うかもしれない。
動揺のひとつもさせられないことが経験からわかり、優花は落ちなくてもいい暗い穴に突き落とされた気分になった。