溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
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その週の土曜日、優花は見合い会場となるホテルエステラへやってきた。同窓会でも訪れたここへ、また来ることになるとは思いもしていなかったけれど。
昨夜遅くに母から優花の元へ連絡が入り、両家の親が同席しないことを告げられ、なんと今日は当事者のふたりだけ。
それならば別の日をセッティングしてほしいとお願いしたが、先方もそれで承知しているからと強引に押し切られてしまった。
形式ばった見合いじゃないため、あまり気張るのはどうかと思い、シンプルな濃紺のケープ風ワンピースにしてみた。
お互いに初対面だから目印が必要だと、優花は母親の指示に従って真っ赤なバラを一輪だけ持参していた。
花はテンションを上げるアイテムだが、バラを一輪だけという気取ったところが照れくささを増幅させる。
待ち合わせは一階のロビーラウンジ。パッと見たところ、優花のようにバラを持っている人はいない。約束の時間まであと十分あるから、まだ来ていないのだろう。
ホテルスタッフに入口が見通せる窓際の席へ案内され、優花は座り心地のいいハイバックソファに深く腰を下ろした。