溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
◇◇◇
ふと、冷たいものが頬にあてられた気がして、重い瞼をゆっくりと押し上げていく。そうすることで初めて、優花は自分が横になって目を閉じていたことを知った。
ぼやけていた焦点が合ったところで鼓動が大きく飛び跳ねる。片瀬がすぐそばにいたのだ。
頬に感じたのは、片瀬の手だったらしい。その手がゆっくりと離れていくところだった。
「目、覚めたみたいだね」
「あの、私……?」
花いかだにいたはずが、どうしてベッドに横たわっているのだろう。そう思いながら、片瀬の背後へと自然に視線が向く。
(……ここ、どこ?)
優花が目を覚ましたのは、片瀬のマンションではなかった。白い壁が印象的な部屋には、片瀬の部屋にも劣らない洗練された高級な調度品が並んでいる。
優花が上体を起こそうとすると、ベッドに腰を下ろしていた片瀬が抱き上げるようにして手伝ってくれた。
花いかだで飲み過ぎて寝てしまったのか、優花にはある時点からここまでの記憶がない。その割に身体や頭が重いということもなかった。