溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~

まさか笑われるとは思いもせず、恥ずかしさに優花の頬が熱くなる。


「そうじゃなくて、近況っていうの? どんなところで働いているとかそういうこと」
「あっ……そうだよね」


落ち着いて考えれば優花もそうだとわかるが、なにしろ片瀬との再会という突発事態。言い訳をさせてもらえるなら、そんな状況で冷静な判断ができなかったと言いたい。


「えっと今は……」


(なんて答えよう……)

結婚したかどうかの純粋な確認のためか、片瀬の視線が一瞬だけ優花の左手に注がれる。

ついさっき、結婚はまだ先でいいと思ったはずなのに、結婚指輪をしていないことを残念だと思う自分がいた。
それはきっと、職を失い、住むところも追われる情けなさがあるためだろう。昔の知り合いに、それも好きだった片瀬に不甲斐ない姿をさらすことが嫌だった。


「どうかした?」


片瀬が、答えられずに俯く優花の顔をくるくるとした瞳で覗き込む。
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