溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
「あの令嬢を呼んだつもりはない。勝手に押しかけてきたことくらいわかるだろう? 俺はコスモジャパンの話に乗るつもりもなければ、彼女と結婚するつもりもないよ」
つい口調がきつくなる。
優花に身を引かせるためだとか、驚いた振りだとか、倉田の言うことは、なにひとつ合っていない。
いつも的確なことを言う倉田にしてはあまりにも的外れすぎて、片瀬は鼻をフンと鳴らした。
「そうなんですか? 私はてっきり社長が心変わりをされたのかと思いましたが。十年も前の恋になど縛られるような方じゃありませんし」
抑揚のない平坦な口調で言われて片瀬は気づいた。倉田は皮肉のつもりで、恵麻をあの場に呼んだのではないかと言ったのだろう。
「……倉田は、どうしてそんなに優花を遠ざけたがる?」
「コスモジャパンとのM&Aに賛成だからです。それと、社長がいつものように戯れで関係をもつような相手ではないというのもありますね。あの手のタイプは後々面倒ですから。まぁそれは、社長ご自身もおわかりかとは思いますが」
倉田は優花のなにをわかっているというのか。片瀬はちょっとした苛立ちを感じた。