溺甘同棲~イジワル社長は過保護な愛を抑えられません~
これまでそんなことで躊躇ったことのない片瀬が、なぜか優花には手出しができなかった。散々キスして、抱きしめてきたはずが。
その夜は、それ以上優花の純粋さに触れてはいけないような気がして、彼女をひとり残し部屋を出た。どこへ行くわけでもない。明け方まであてもなく車を走らせた。
その朝、何事もなかったような素振りで優花を迎えに行った片瀬だったが、目の前の彼女をどう扱ったらいいのか困惑した。
それは優花も同じだったようで、片瀬を見た瞳が戸惑いに揺れる。
そんな彼女を抱きしめたのは、無意識の行動だった。腕の中に優花がいることに気づき焦ったのを片瀬はよく覚えている。
にわかに溢れた愛しさに目をつむり慌てて引き離すと、優花はまるで捨てられた子犬のような目をして片瀬を見つめた。
ひどいことをしたのだと、そのとき気づいた。優花を手ひどく傷つけたのだと。
そんなことに気づけば、これまでのようにキスするわけにはいかなかった。
情けないことに、その後も優花にどう接したらいいのかわからず、なるべくマンションでも顔を合わせないようにしてきた。
これまでの片瀬の恋愛経験では考えられない事態だ。