野獣は時に優しく牙を剥く

 食べ終わると恥を忍んでお金の相談をする。
 彼に強い態度を取れなかったのはその相談をしたかったのことも多分にあった。

「先程の大学の話ですけど……。」

「ん?うん。」

 2人で食器を片付けて並んで洗う。
 向かい合って話さずに済む今じゃなければとてもじゃないけど話せない。

「お金……。
 今よりかかることになるので……。」

 これではお金を無心している人でしかない。
 確かにそうなのだけど……彼にそれだけで側にいると思われたくなかった。

 ううん。今はどう足掻いてもそれ以外の立場にはなれない。
 彼の助けになれるように死にものぐるいで努力して認めてもらえるように頑張るしかないんだ。

「あぁ。そのことなら。
 澪のことだからおじいちゃんのお金に手をつけていないだろ?」

「え、えぇ。」

 まさかそのお金のことを持ち出されてるとは思わなかった。
 大学のお金くらい心配するなって大盤振る舞いする彼を想像していた自分を恥ずかしく思った。

「それで今の立て替えている借金を全額返済しないか。
 そう提案するつもりだった。」

 祖父が渡してくれた通帳にはちょうど300万円くらい入っていた。
 そこには祖父の気持ちが詰め込まれている。


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