野獣は時に優しく牙を剥く

 知らない間に意識を手放していたようだ。
 頬がくすぐったくて目を開けた。

「ごめんね。起こした?
 可愛くて触れられずにはいられなかった。」

 甘い言葉を囁く龍之介が目を細めて澪を見つめる。

「あ、あの。ごめんなさい。
 私、その、龍之介さんを満足させられなかったんじゃ……。」

 穏やかな表情をしていた龍之介が目を丸くして、それからクククッと笑みをこぼした。

「俺の心配をするなんて余裕だなぁ。
 体、つらくない?」

「えっと、だるい感じはありますけど。」

「痛みは?無理させたよね。ごめん。」

「無理だなんて、そんな……。」

 恥ずかしい。
 痛みよりも龍之介と一つになれたことが嬉しかったなんて思っている自分が。

「もう少しイチャイチャしてもいい?
 平日はプライベートで会えないと思うと離し難いんだ。」

 返事を聞くよりも早く龍之介は澪の肌に手を滑らせる。

「ま、待って。」

「待たないよ。
 ごめんね。余裕のない男で。」

 色気を隠そうとしない龍之介が澪の唇に触れる。
 再び重なる肌と肌はベッドへと深く沈んでいった。
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