野獣は時に優しく牙を剥く

 仕方なくお茶を用意して2人がいる和室へと運ぶ。
 その間に随分と意気投合している谷がなんだか恨めしい。

 祖父も上機嫌のようで珍しく饒舌に話している。

「澪も入社したての頃に社長が若いのにすごい人だって褒めとったなぁ。
 そっかぁ。その想いが成就したんだなぁ。」

 しみじみ語る祖父の言葉に、それじゃ私が谷さんのこと好きだったみたいじゃない!と、やきもきする。

「それは嬉しいなぁ。
 僕が一方的に好意を持ってて強引にOKしてもらったとばかり……。」

 谷は谷で学生時代は演劇部でしたか?というくらい照れたような演技がお上手だ。
 呆れてモノが言えないとはこのことだと思う。


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