野獣は時に優しく牙を剥く

 朝帰りさせた孫娘を送り届けに来るのは、さすがに彼でも緊張するんだと、些か新鮮な気持ちになった。

 二人の視線を集めたせいで谷は余計に口籠って言葉をこぼす。

「大したことじゃないのですが、、。
 澪さんの寝顔が可愛らしくて……その……。」

 照れたような顔をして口籠る谷にこちらの顔が熱くなる。
 必死に心の中で、嘘だから。彼のいつもの軽口だから。と、唱えてみても顔の熱は引いてくれない。

 祖父は谷と澪を交互に見比べてしわしわな顔をますますくしゃくしゃにさせた。
 そしてとんでもないことを口にする。

「これは曽孫の顔を拝めるのも近そうだ。」

「お、おじいちゃん!!」

 あまりの発言に澪は思わず声を上げて抗議する。

 もちろん祖父はどこ吹く風だ。

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