野獣は時に優しく牙を剥く

 祖父の戯言にも谷は丁寧に返答した。

「いえ。それは順を追って、、。
 昨晩はご心配をおかけしたのに厚かましい限りです。」

 谷も谷だ。

 謙遜するような態度を取っておいて、順を追ってとは。
 スタートラインにも立っていないというのに。

 澪の気持ちはおざなりに進んでいく話に馬鹿らしくなって「お茶でも用意してくるね」と先に靴を脱いで台所の方へ歩を進めた。

 お茶を準備して持っていくと既に仕事の話を始めていて、谷が仕事熱心なのはここでも健在なのだと感心して邪魔にならないように静かに隅へ腰を下ろした。

 谷は年配の人向けの体の動かし方などの資料を見せながら実際に祖父に試してもらっている。

「なかなか興味深いな。
 で、これはなんだ?
 レクリエーションってやつか。」

 おぼつかない横文字を口にしながら祖父は楽しそうに指差している。
 もともと体を動かすことが好きな祖父に新しい機能を考えるために意見を聞くのは理にかなっていると思う。

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