愛しいのは君だけ
お母様は綺麗で真っ赤な薔薇色の瞳なのに、私は漆黒だった。
髪の毛の色は同じだけれども、輝きはお母様の方が強かった。
そして私にはお母様にない、手首に巻き付くようなイバラのアザがある。
だから、私はいつも手袋をはめていた。
王宮の人達は王女のことをこう言った。
________________呪いの子、と。
お母様は薔薇姫。
だけど私は、黒薔薇姫。
私の教育係であるクラウス・ユア・クロムシェルが教えてくれた。
クラウスが守りたかったのはお母様だけど、お母様の娘である私もちゃんと守ってくれた。
クラウスが古い文献を調べてくれたおかげで私は殺されず、離宮へと追われるだけで済んだ。
まぁ、クラウスはお母様だけの専属騎士だったから当然だよね。
……そんなわけで、まだまだ色んな秘密はあるけれど私は第一王女として生まれながら王族としての暮らしは出来ていないのだ。
コンコン……ッ
「……シエラ、おきてる?」
「シャルル、おはよう」
私は自室のベッドに座り込んだまま、部屋に入ってきたシャルルに視線を向けた。
シャルルは伯爵令嬢なのにドレスも着ずに、騎士用の服を着ている。