愛しいのは君だけ
.......ガチャッ
私は客間に入ってヴィンセントを見つけるなり、彼の側へと駆け寄った。
「ヴィンセント!」
「……っシエラ、おはようございます」
私の姿を見て、彼は一瞬驚いたように目を見開く。
「おはよう。……私、何かおかしい?」
「......いえ。ただ、そうやってちゃんと着飾れば王女と言われても違和感はありませんね」
「……へ?」
それって、ちゃんと着飾れば第一王女に見えなくもないってこと?
でもこんなドレス、普通の第一王女が着てるわけないわ。
「馬子にも衣装、って言うんですかね」
「……っえ?いいえ、こんなドレス貴族なら普通よ。私は王族だから、本当ならもっともっと豪華なドレスが……普通なんだけどね」
「……ワケあり、ですか。こんな宮殿から離れた離宮にいるから、社交の場で第一王女を見たことが無かったんですね」
「それについては、今度話す。今は黙って姫様の教育係を引き受けてくれないか」
グランスがシャルルを連れて客間へと入ってきた。
「教育係……?」
「……僕にシエラの教育係をやれって?」
冗談じゃない、とでも言うようにヴィンセントは首を横に振った。