愛しいのは君だけ
世間知らずの王女
【ヴィンセントside】
あれからというものの、僕はシエラに振り回され続けた。
ある時は触らせてといい、またある時は服を脱いでとまで言うようになった。
もちろん、服なんて脱げるわけがない。
僕とシエラは教育係とその生徒という関係なだけで、恋人でもない。
全く、困ったプリンセスだ。
教育係がそこらの男だったら、シエラは完全に襲われてるところだろう。
今更ながら、何故教育係を引き受けたのかと後悔し始めた。
そして、グランスとシャルルには未だに専属騎士になって欲しいとせがまれ続けている。
つまり、シエラの婚約者になれってことだろう。
31歳でありながら僕には婚約者がいない。
縁談が来ない訳では無いけれど。
結婚適齢期はとうに過ぎているが、社交界で出会うようなお金目的のご令嬢とは結婚なんてするつもりはない。
だったら、身分隠して町娘と遊んでいる方がまだマシな方。
……そして、今日もグランス達に専属騎士になって欲しいとせがまれ_____________
「ヴィンセント!ねぇ、私の婚約者になって」
_____________なかった。
あぁ、今日はシエラか。