愛しいのは君だけ
1度も会ったことは無いけど、名前だけはしょっちゅう聞いてるからね。
会ってもいないのに、もう既に僕の中でのクラウスさんは『まともじゃない』。
「……シエラ、その言葉僕以外に言ったらダメですからね」
「どうして?」
「まず、クラウスさんの言うことは信じないようにする事から始めた方が良さそうですね」
「クラウスは私の教育係だったんだよ?何で信じないようにしないといけないの」
「クラウスさんがあなたに教えてることはおかしいからです」
あぁ、いつまで僕はこの世間知らずプリンセスの教育係をすればいいんだ。
振り回されてるのは僕だけだ。
僕にだって、たくさん仕事はあるのに。
「クラウスはお母様の元専属騎士だったのに」
クラウスさんが、全女王陛下の元専属騎士?
それは何かの間違いじゃ……
「ヴィンセント、信じてないでしょ?ホントのホントにお母様の元専属騎士よ。優秀なんだから」
そう付け足すシエラの表情には今にも涙が浮かびそうだ。
全く、この純粋すぎるお姫様には困ったものだ。
「わかりましたよ。優秀なのはわかりました。ですが、それとこれとは別です」