愛しいのは君だけ
だから、……第一王女の存在を誰も不思議に思わなかったんだ。
「……シエラは、王座を取り戻したいのですか?」
「当たり前じゃない!」
「それで、取り戻したあとは?」
「.......私が、女王になるわ」
「世間知らずなのに?」
「私は薔薇姫よ?お母様がいない今、継承者は私なんだから!」
「それは分かりましたけど.......。」
シエラが薔薇姫だと言うことは分かった。
話を聞いていれば、確かに彼女は列記とした王家の血筋だ。
「ひとつ聞いてもいいですか」
だが、ひとつだけ毎日シエラを見ていて気付いたことがある。
「何が聞きたいの?」
薔薇姫なら何故……
「瞳の色が黒の理由は?」
「……ッ」
シエラの表情が一瞬にして凍りついた。
その表情を見た瞬間、聞いてはいけない事だと気付いた。
「っ失礼しました。今のは聞かなかったことにしてください」
慌ててそう伝えるが、シエラの表情が変わることは無い。
______コンコンッ
「失礼します。姫様、紅茶を……姫様??」
グランスがドアをノックしておきながら、返事を聞かずに開けて入ってきた。