愛しいのは君だけ
***

グランスの私室に入って柔らかそうなソファに座り、一息ついたところでグランスが顔を上げた。


「……で?姫様と一体何があったんだ」

「地雷、踏んだのかも。僕がシエラに余計な事聞いた」

「何を聞いた?」

「瞳が黒いのはどうして、って」

「……っだからか」

グランスは深いため息をついて項垂れた。

そんな反応をされたら気にならないはずがない。

きっと、グランスはシエラのことならなんでも知っているんだろう。

だって、彼はシエラの専属騎士だから。


「教えて、くれない?」

「姫様から直接聞いた方が良いじゃないのか」

グランスは難しい顔をしてまたひとつため息をつく。


「あんな状況でシエラが自分から話してくれると思うのか、グランス」

「それもそうだな」

最初に出会った時は剣の腕前と二つの剣を使いこなすシエラに感心したし、それがまだ若い女の子だと言うことに驚いた。

更にはその若い女の子がこの国の第一王女で王宮には住んでおらず、プリンセスとは思えない暮らしをしている。

そして世間知らずで男を知らない。

成り行きで、シエラの教育係をやることになった。
< 38 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop