クラスメイトの告白。


「夏休み、ここにいないって……どういうこと?」


「働かないと。遠くに行くから帰ってこられない」


普段からバイトで忙しそうなのに、夏休みはそれ以上に働くつもりなの?


私はいまだに伊原くんのバイト先を知らない。


前に仕事先の人に車でアパートまで送ってもらっていたのは見たことがあるけど、そのときもなんの仕事をしているのか、伊原くんは話さなかった。


「遠くに行くって、リゾート地でバイトでもするの?」


「……まぁ、そんなとこかな」


やっぱり、はっきりとは答えない。


伊原くんはいまひとり暮らしだし、生活やお金のこともいろいろ大変だと思う。


あまり聞かないほうがよさそうな雰囲気だし、彼が自分から話してくれるまでは、私もバイトのことを聞くのはやめよう。


「両親いないし、がんばって働かないとな」


「え……? 伊原くんの両親て……」


いままで伊原くんの両親のことを、ちゃんと聞いたことがなかった。


東京からこの町に転校してきたのも白石さんのためで、伊原くんは両親に反対されて家を出てきたのだと勝手に想像していた。


だから両親にお金を援助してもらえず、必死にバイトをして、ひとり暮らしの生活をしているのだと……。


でも、そうじゃなかった。
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