クラスメイトの告白。
「汐野に言ってなかったっけ? 両親が事故で亡くなってること」
「聞いてないよ」
「あれ? 前に話したような気がするけどな……」
私は首を横に振る。
「まだ幼いころ、家族でハワイに旅行してるとき、事故が起きたんだ」
知らなかった。
伊原くんの両親が事故で亡くなっていたこと。
「いまでも、ふとしたとき急に襲ってくるんだよな……寂しさとか、逢いたい気持ちが」
そう言って彼は、夜空を見上げた。
「もう誰も失いたくない」
さっき、病室で彼が言っていた言葉が頭の中に浮かんだ。
『俺には茉雛しかいないんだから』
幼いころに両親を亡くした彼にとって、愛する彼女……白石さんの存在は誰より大切で、心の支えだったのかもしれない。
前に、彼は私に言った。
彼女が助かるなら、自分の命はどうなってもいいと。
また大切なひとを失ってしまうかもしれないと、どれほど怖かっただろう。