クラスメイトの告白。


「田舎は東京とちがって星がよく見えるよな。今夜も満天の星だもんな」


夜空を見上げる彼の横顔を、私は見つめる。


「人は死んだら星になるっていうけど……こんなにたくさんの星があったら、親がどこにいるかなんてわかんないよな」


大切なひとたちを亡くした悲しみを抱えて、彼は生きてきたんだ。


幼いころから、どれだけの寂しさに耐えてきたんだろう。


どんなに逢いたくても、叶わない。


どんなに恋しくても、逢えない。


いままでどれほどの時間、彼が夜空を見上げて両親を想い、星をさがしていたのかと思うと、胸が張り裂けそうだった。


普段、私の前で見せてくれる笑顔の奥には、両親のこと、白石さんのこと、私には計り知れないほどのつらい想いが隠されていたんだ。


……抱きしめてあげたい。


彼を抱きしめて、背中をそっとなでてあげたい。


私じゃ……ダメなのに……。


夜空を見上げていた彼が、私を見て優しく微笑む。


「どうして汐野が泣くの?」


気づいたら、涙が頬をつたっていた。


「ごめん、私……」


彼は、涙が止まらない私を抱きしめた。


驚いた私は、動けなくなる。


「泣かないで、汐野」


本当は、私が抱きしめてあげたかった。


寂しさも、悲しさも、逢いたい気持ちも……本当は私がすべて受け止めてあげたかった。
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