クラスメイトの告白。
「伊原くん」
「もう退院するのか?」
「うん。伊原くん、白石さんの病室にいるのかと……」
「いや、警察に事情聞かれてた」
すると、私の隣にいたお母さんが伊原くんの前に立ち、彼の手をとり両手でにぎりしめた。
「娘のこと助けてくれて、本当にありがとう。今度よかったら、うちにご飯でも食べにきてね」
「あ、はい……ありがとうございます」
そう言って伊原くんはペコッと頭を下げる。
「それから、ご両親にもお礼をしないと……」
「お、お母さんっ! お父さんの車来たよ。先に車に乗ってて」
私はお母さんの両肩をつかんで、無理やり車のほうへ歩かせた。
「ちょっと押さないでよ、風杏」
「いいから、車乗って」
振り返ったお母さんは、伊原くんに向かって頭を何度も下げる。
家に帰ったら、お母さんたちに伊原くんの両親は亡くなっていることを話さなきゃ。
車に乗りこんだお母さんの姿を見て、私は伊原くんのところに戻った。
「優しそうな両親だな。風杏がいい子に育ったわけがわかる気がする」
「伊原くん……」
「ゆっくり休めよ」
「うん。伊原くんは、白石さんの病室に?」
「うん。あとで茉雛の親が来るから、それまでいる」