クラスメイトの告白。


「あ、そうだ。汐野さんに頼まれてた件……このあいだ、白石さんのお見舞いに行ったときに、病院の前で音と偶然会ったから話してみたよ」


「本当に? 音ちゃんはなんて?」


「ありがとうって、私が渡した紙は受け取ったけど……」


「そっか。音ちゃんが勇気を出して連絡してみてくれるといいんだけどな」


赤西さんと音ちゃんは、1年生、2年生と同じクラスだった。


でも、赤西さんはひとりでいることが多く、音ちゃんも自分から話しかけるタイプではないため、2年間同じクラスでも相手のことをほとんど知らないという。


赤西さんは、音ちゃんが吹奏楽部の先輩にいじめられていたことを知らない。


そして、音ちゃんも赤西さんが不登校になった理由や黒河内先生にされたことを知らない。


ただふたりは、それぞれ心に深い傷を抱えている。
< 287 / 372 >

この作品をシェア

pagetop