クラスメイトの告白。


「今日、最後に歌う曲は、俺が作ったんだ」


「ええっ!? すごい……楽しみ」


「これ、風杏にあげる」


折り目のついた紙を受け取る。


その紙には、ライブの最後に歌う曲の歌詞が書かれていた。


「伊原くんの手書きの歌詞? もらってもいいの?」


彼は笑顔でうなずく。


「最高のライブにする」


「うん。みんなにとって忘れられない楽しい思い出になると思う」


そして、私にとっても忘れられない思い出になる。


今日のライブが終われば、さよならなんだ。


彼は東京に戻ってしまう。


だから、彼の姿を一瞬も逃さずに、この目に焼きつけたい。


夢の時間が終わるまで。


「風杏」


彼は私をそっと抱きしめる。


「え、ちょっ……誰かに見られでもしたら……」


そして彼は、私の耳もとでささやいた。


「最後の曲は、風杏のために歌うから」
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