スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】

「しばらく電源切っておいて」

「ねぇ、なんなの? どうしたの?」

「ちょっと厄介事。だけど、とわは関わらなくていい。とわは、俺と居て」

「意味わかんないよ 」

「ここじゃだめ。静かなところでゆっくり話すから」

 だから、行こう。と桜庭くんは半ば強引に私の腕を掴んで歩き出す。訳の分からないまま歩き出した私は、廊下の向こうに見える書道部の展示がしてある1年B組の教室前に人だかりがあるのに気がついた。

「桜庭くん、書道部で何かあったの?遠野先輩からも電話来てたから、行きたいんだけど」

「それも後で大丈夫」

 桜庭くんは私をそこから遠ざけるように足早に進もうとしたけれど、正面から書道部の1年生の館山くんが走ってきた。

「瀬川先輩! あれ見ました?!」

 その声も、やはり焦っているように聞こえた。

 あれって何? 人だかりができていた書道部の展示室に何かあるの?

「今は見なくていい」

 湧き上がる心配と好奇心が、何も話してくれない桜庭くんへの不信感へと変わる。

「なんで見ちゃダメなの?」

「見ちゃダメってわけじゃないよ。でも、後にして」

「なんで今はだめなの? 桜庭くん、何隠してるの? 私、書道部だよ? 書道部で何かあったなら、なにがあったか位はちゃんと知りたい。桜庭くん、離して」

 そこまで強く掴まれていなかった腕を振り払うと、諦めた様子で桜庭くんは息をついた。

< 104 / 206 >

この作品をシェア

pagetop