スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】
スマホのメッセージアプリを開いて、桜庭くんの名前を探す。連絡先を交換してからあの日まで、1番上にあることが多かった桜庭くんの名前は……随分と下に押しやられていた。
久しぶりに開けば『着いたよ』と、あの日の朝のメッセージが目に飛び込んできて、胸が痛くなる。
あの学年集会の前までは、時々開いてはいた。桜庭くんに何度もメッセージを、送ろうとしてはいたのだ。結局、怖がりの私は送ることは出来なかったけれど。今でも焦がれるほどに恋しいあの日の桜庭くんの腕の中と、姿すら見ることもなくなった現状との落差に何度も絶望的な気持ちになって、とてもじゃないけれどメッセージを送れなかった。
忘れさせてあげる なんていう一方的な約束も、初めてのキスも、ボールを追って走る桜庭くんを視線で追いかけたのも、夕暮れの海の潮風とさざ波の音も。
桜庭くんを待っている約束も。ペンギンを見に行く約束も。
男の子に抱っこしてもらって保健室に連れてかれるなんて考えたこともなかったし、階段から落とされるなんてことも……考えたことなかった。