スイート ジャッジメント【番外編、別視点公開しました】
嬉しかったことも、辛かったことも桜庭くんの思い出は、全部が鮮明すぎるほどに思い出せる。
忘れることなんて、きっと出来ない。
そのくらい、私の中は桜庭くんでいっぱいになった。
私は……? 私は桜庭くんに何かしてあげられてたかな……? 私は桜庭くんの心の中をいっぱいに満たしてあげられてたかな?
自問自答する程に、失われていく勇気に、涙が出そうになる。
だけど、きっともう、今日しかない。次のチャンスなんてない。
茅ヶ崎さんも、武田も……私よりもずっと桜庭くんのことを知ってる人達が、私の背中を押してくれたんだから。
手の甲で涙を拭って、深呼吸をして、目を伏せて、溢れてきそうな涙を押し込めた。
部活の最終日、積もる話も沢山あるのだろう。桜庭くんから連絡はなかなか無かったけれど、それは私の心を落ち着けるのにちょうど良い時間だった。
少しお腹がすいたのを感じながらのんびり進む時計をぼんやり眺めていた頃、書道室のドアが開いた。
まるで半年前に戻ったように、当たり前のことのように、書道室の入口に立った大好きな人が、私を見て笑った。