クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「本当に、本当ですか?」

「嘘をついてどうする」

アンナは目を輝かせ、天にも昇る気持ちで勢いよく立ち上がった。

「ああ。夢でも見ているみたい!」

パンパンと両頬を手で叩いてその痛みに夢ではないことをしっかり確かめる。

「今夜、仕事が終わり次第この木の下に来い。見つかると厄介だから誰にも言うんじゃないぞ?」

「はい!」

人差し指を口元にあてがう彼の仕草にドキドキしながら、アンナがぐっと胸の前で拳を握ると、ジークの大きな手が頭に載せられた。

「それと、お前が木に登っていたことは秘密にしておいてやる」

「……も、もうしません」

国王であるジークにはしたない姿を見られたことを思い出し、恥ずかしさで顔が赤らむ。しかし、ジークに触れられると温かくて心地いい。しばらくこのこそばゆさに浸っていたかったが時間がそうはさせてくれなかった。

「私、そろそろ調理場へ戻らないと! あの、今夜、ここで待ってますから」

慌ただしく言い、アンナは何度もジークに振り向いて手を振る。そして小走りに建物の角を曲がっていった。
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