クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「あ、あの……ジーク様、私、こういうことは――」
――わからない。

十八にもなって色恋を知らないことを改めて恥ずかしいと思う。

「こういうこと、とは? お前、もしかして口づけが欲しいのか?」

「えっ!? ち、違っ」

深読みしすぎて変に誤解されてしまったようだ。アンナは全力で否定するようにぶんぶんと首を振ると、そんな慌てた様子にジークがクスリと笑った。

「なにを狼狽えている。初めて……ではないだろう?」

「え?」

ジークと出会ったときのことを思い出す。薬を飲まされたあのとき、口移しと言われたものの、あの感触とぬくもりはいまだに記憶に残っている。そして無意識にアンナの頬がより朱に染まった。


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