クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「バンクラール卿は私が療養中、いつも口癖のように“私に万が一、なにかあったらアンナを頼む”と言っていた。彼は、私を救うことで殺されるかもしれないということを悟っていたのに……私は、そんなことにも気づけないほど……未熟だったんだ」

蘇る悲しみと怒りに震えるジークに、アンナは声をかけることができなかった。彼がずっと罪悪感という名の十字架を背負って今も生きているということに、胸が引き裂かれそうになる。

「バンクラール卿は尊敬に値する人だった。彼も貧しい人々たちに無償で治療を施し、その意思を私は継いだ。そんなことで罪滅ぼしになるとは思わないが……私は、時々自分でも生きていいのか……わからなくなる」

無償で治療を始めた本当の理由は、父の意思を引き継ぐためだった。
真実を知り、アンナはたまらなくなって言葉を発するよりも先に行動に出ていた。俯くジークの後ろ姿に手を伸ばし、その広い背中に飛びついてぎゅっと抱きしめると、ジークの身体がわずかに跳ねた。。

「お前……」

「もうやめて! これ以上自分を責めないでください。ジーク様は何も悪くない」

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