クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「わ、私……」

「ここは大丈夫だ。ひとりで帰れるな?」

そう言われてもアンナは頷かなかった。ひとりで帰ることができないわけではない。ジークは今、ここで人の命を救おうとしている。それなのに自分だけおめおめと城に帰るなんてきっと何もできなかったと後悔する。そう思うとアンナはぐっと手を握りしめた。

(そうだわ……私、ジーク様の力になりたいって、そう思ってたじゃない。ここで負けちゃだめ)

「あの、私になにかできることはありませんか? 私も手伝います!」

その言葉を発しただけでも前に進めたような気がした。意表をついたアンナの申し出にジークは視線を落とし躊躇する。

「しかし……」

呻く男の声が一刻の猶予も許さない状況を煽る。アンナは揺るぎないまっすぐな目を向け、ジークの決断を待った。

「今すぐに湯と清潔な布を用意してくれ」

落とした視線をアンナに戻すと、それだけ言ってジークはすぐさま横たわる男の服を裂き始めた。

「はい!」
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