クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「実は今月、近隣国との交流のためにこの城で舞踏会が催されるはずだったが……ベアトリクスが脱走した今、どんな危険が潜んでいるかわからない。それでベアトリクスが再び牢屋に戻る日まで舞踏会は延期とした。本当はお前のドレス姿が見たかったが……」

ジークは口惜しそうに眉を顰めると、もう一度ため息をついた。

「あの、ちょっと待ってください。舞踏会みたいに身分の高い方々が集まる場所に、なぜ私が? しかもこんな立派なドレスを着て? 舞踏会のことだって、なにも聞いてませんけど……」

アンナはきょとんと目を丸くしてジークに向き直る。

「お前とダンスをしたかった。ただそれだけだ。このドレスも……お前になにも言わずに勝手に私が用意した」

「え?」

気持ちが先走っていることを悟られて気恥ずかしさを覚えたのか、ジークはパッと顔を逸らした。

「私が……舞踏会に? ジーク様、それはいくらなんでもできません。私は、使用人で身分の低い者ですから」

本当のことを言えば、このドレスを着てジークの手を取り一緒にダンスをすることができたらどんなにいいか、と今にもそんな妄想にも似た願望が溢れ出てしまいそうになる。

「お前は、どんなに身分の高い貴婦人よりも美しく聡明だ。私がそうしたいというのだから、なにも問題はない」

単なる戯れだと言ってしまえばそれまでだが、自分のためにこんな高価なドレスを用意してくれていたことに困惑する反面、嬉しかった。
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