クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
ベアトリクスが来客のようにいきなり屋敷に現れたのはつい先日のことだった。

その日の早朝、たまたま屋敷の前でグレイグと出くわしたベアトリクスは何食わぬ顔で彼に『ごきげんよう』とにこりと微笑んだ。そのときのミューラン卿は、乗っていた馬から落ちんばかりの驚きようだった。

屋敷の従事たちに彼女のことは他言無用にして、ミューラン卿はベアトリクスを匿うために、ひとまず王都の外れにある別邸へ移動させたのだった。

「あなたに会いたくて。牢獄の中でもずっと想っていたのよ。もっと顔を見せて」

ベアトリクスはミューラン卿の頬に手をあてがうと、目元を和らげた。

「牢獄の中でも想っていた……か、私と別れてアルフレッド国王に嫁いだくせに、よく言う」

「まぁ、そんな意地悪を言わないでちょうだい。あなたのそういう皮肉なところ、嫌いだわ。昔から変わっていないのね」

今まで上機嫌に笑っていたベアトリクスの表情がさっと変わり、眉を寄せてプイッと顔を背けた。

「そうむくれるな。私だって、お前のことを忘れた日はない。その証拠に、この年になっても妻を娶らずにいるだろう?」

すると、それを聞いたベアトリクスはミューラン卿に向き直り、パッと顔を明るくさせた。
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