クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
(一体、どうしたというのかしら……いつも大人しい子なのに)

あんな険しい表情をしたリデルを見たのは初めてだった。廊下を歩きながら考えていると。

「先ほどはすみませんでした。あいつ、アンナさんをお迎えに行く前に肉を食ったんで、リデルもその匂いに反応したんでしょう」

兵士は、あははと笑っているがリデルはそんな卑しい犬ではない。なにかを警戒していたような、そんな気がしてならなかった。

「実は、ジーク様から今夜製薬室にアンナさんをお連れするように言いつかっているんです。新しい薬の作り方を教えたいとのことで」

「え……?」

「ですからこのまま、製薬室のほうへお連れしますね」

そんな話、ひとこともジークから言われていなかったが、急に思い立ったことかもしれない。

「あの、本当にジーク様がそのようなことを?」

一抹の不安にアンナがそう尋ねると、兵士は平然と「はい」と答えた。

なにか嫌な予感がする。しかし、本当にジークがそう言っていたのならば無視するわけにはいかなかった。

「わかりました。では、製薬室のほうへ連れて行ってください」

そう言って、アンナは兵士に連れられて製薬室へ向かった――。
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