クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
その表情は窺い知れないが、きっと口元を和らげて笑っているに違いない。「嬉しい」と言っておきながら父のことを元凶呼ばわりしている。彼女の腹積もりが見えずにアンナは困惑するばかりだった。それに暗くてこちらからはベアトリクスの顔が見えないというのに、夜目がきくからと言って相手にだけ自分が見えているのが気味悪かった。

「ベアトリクス様、約束通り地下へお戻りください。もうお話は充分でしょう?」

「あら、何を言っているの?」

「え……?」

ベアトリクスの口調が鋭くなる。その傍らでソフィアが息を呑んで狼狽えているのがわかった。

「そろそろここへお迎えが来るはず……私はこのお人形さんを連れて帰るわ」

「連れて帰るって……どういうことですか!? まさか、初めからそのつもりで……」

ふたりのやり取りを聞いていると遠くから馬の蹄の音が聞こえてきた。馬車に乗って誰かがこちらへやって来る気配が近づいてくる。

「ベアトリクス様、私を……私を裏切るおつもりですか? その娘と話をしたら牢屋に戻ると仰っていたから信じていたのに」

ソフィアの震える声は絶望に満ちていた。そんなソフィアをベアトリクスは気にもかけず鼻で笑った。

「裏切る? あなたと私の間にそんな綺麗な絆があったかしら? ソフィアは素直でいい子、だけど……」

ベアトリクスがアンナの腕を掴む。

「痛っ!」
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