クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「ロウ様……あなただったのですね、裏でベアトリクス様の手を引いていたのは……外の情報を流していたのも! ランドルシア王国の大臣ともあろうお方が、なんということを……」

声を荒げるソフィアにベアトリクスは鬱陶しそうに眉を顰めた。それと同時にアンナの腕を掴む力がぐっとこもる。

「離して! 離し――」

そのとき、ランタンの灯りにうっすらとベアトリクスの顔が照らし出された。ようやく闇からその素顔が現れて、アンナは身体を強張らせる。

(この人が、ベアトリクス様……)

初めて見るその姿にアンナは瞬きを忘れて目を奪われた。

ベアトリクスは真っ赤な唇を三日月型に曲げて怪しげに微笑んでいた。肌は陶器のように白く、長年幽閉されていたとはいえ、衰えることを知らない美貌の持ち主だった。

「急いでこの子を馬車へ入れてちょうだい。いいこと? 騒いだりしないで大人しく私に従うの、わかった? さもないと……そうね、この場でソフィアを殺そうかしら」

ベアトリクスは、まるで子どもに諭すような口ぶりで平然と恐ろしいことを口にする。前にジークが『悪魔に魂を売った女だ』と言っていたが、アンナは今、その意味がわかった気がした。
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