クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「ソフィア様を殺すですって? そんな、どうしてそんなひどいことを――」

「だったら、黙って私の言うことを聞いてちょうだい」

どうすることもできず、アンナは身の毛もよだつ思いで口を噤んだ。

(私がここで拒めばソフィア様が……そんなの絶対だめ!)

言葉の代わりにコクリと頷くと、ベアトリクスは満足げに「いい子ね」と言ってアンナの頭を撫でた。

「アンナ! 言うことを聞いては駄目よ!」

馬車に乗るようにロウに促されると、ソフィアが駆け寄ってくる。しかし、ベアトリクスによってそれは阻まれた。

「ソフィア、あなたいつからそんな悪い子になったの? あなたの母親代わりでずっと可愛がってあげていたとうのに……」

「ベアトリクス様、こんなことをして……ジークが許さな――あっ!」

パシンと乾いた音をさせてベアトリクスはソフィアの頬を叩いた。

「私の前でその男の名前を言うなんて……私がどんなにジークを憎んでいるかわかっているでしょう、ああ、名前すら口にするのも汚らわしいというのに!」

ベアトリクスは鋭い目つきで睨み、そして叩かれた頬を押さえて放心しているソフィアに言った。

「ソフィア、このことは誰にも言っては駄目よ? 何も見なかったことにするの。もし、誰かに告げ口でもしてごらんなさい、あなたの実家、アデレード家を潰してやるわ」

「なっ……!」

「そう、これは夢だったのよ。全部、あなたの夢……おやすみなさい、ソフィア」
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