クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす

しばらくすると大半の客は店を出て二、三人の客が残っているだけになった。今夜作った食事がなくなり次第閉店なので、そろそろ今夜の営業も終わりだ。

「……それで、この間の大雨でせっかく育ててた薬草が少し駄目になってしまって。あ、今勉強中なのはマンドレイクの育て方なんですけど」

仕事がいったん落ち着くと、アンナは来客に交じってお喋りを一緒に楽しむ。風来の貴公子がやってきたときには彼の向かいに座り、相手が無言であろうとアンナはお構いなしに言葉を並べた。聞いているのかいないのかはわからないが、いつものように風来の貴公子はじっと座って耳を傾けている。

あっという間にシチューを完食し、しばらくすると風来の貴公子がすっと席を立った。