クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
どこかで見たような気もするが記憶がさだかではない。食い入るように指輪に刻まれた紋章だけしっかり目に焼き付けていると、風来の貴公子が何かを感じ取ったのか、さっと手を引っ込めてしまった。

「あ、あの!」

「アンナ、ここのお皿を洗っておいてくれないかい?」

踵を返して店を後にしようとする彼の背中を呼び止めるが、そこでミネアに声をかけられる。

「わかったわ、すぐ行く」

今度はいつ来られるか聞いてみたかった。けれど、アンナが向き直ったときにはすでに風来の貴公子の姿はもうなかった――。
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