見えない世界でみつけたもの
「静……?」
「いや……」

 声が聞こえる。

 その声は泣き声に近い。

 静は泣いているのか?

 俺が泣かせたのか?

「……静」
「嫌! ……嫌なのっ! 私は雄太のそばにいたいの。いつまでもいたいの!」

 静の声は響く。部屋の中に、俺の中に……。静に俺のそばにいて欲しい――それは俺の本心だ。それは否定しない。

 でも今のままでは、いつか……俺達は駄目になる。

「静……俺は静が好きだ」
「雄太……」

 俺の声に静は驚いているみたいだ。身体から離れる重み。首にはまだ静の温もりがある。

「だから……無理をして欲しくないんだ。俺のせいで静を苦しめたくないんだ」
「そんな事ないっ! 私は雄太と一緒にいる事が好きなの……雄太が好きなの!」

 静の声が聞こえる。

 力強い、迷いの無い声が俺に聞こえる。その言葉は俺の心に響いた。

「静……ありがとう。でも俺はそれを受け入れたら駄目になる」
「雄太……」
「それじゃ、今までと変わらない。何も変わらない」
「それでいいんだよ……雄太」

 静の声は優しかった。

 俺を包むように聞こえる声は、とても優しく聞こえる。

「いいんだよ……。今まで私は雄太と一緒にいれた事が嬉しかった。私、約束したよね? 雄太の目になるって……」
「静……」
「最初は出来ないかもって思った事もあるんだよ。でも雄太は一生懸命頑張ってた。だから私も頑張れたんだよ」

 静の声はゆっくりと思い出すように話している。俺は頑張ってこれたのだろうか。

「私は雄太の隣を……っ……いっしょ、に……」

 静の声は途切れて聞こえる。

 嗚咽も混ざっている。堪えていたものが壊れたみたいだ。もう言葉になっていない。また身体に重みがかかる。
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