見えない世界でみつけたもの
「…………ん? ここは」

 声が聞こえる。この声は静だ。

「……ゆう、た?」
「静? 目、覚めたか?」

 俺は静を探した。

 静に触れたかったから。手が彷徨う……静を探して。

「雄太」
「……静」

 俺の手を何かが触れる。指に絡む感触は静の指――静の手が俺の手を包む。

 優しく温かい手が俺の手を包む。

「静――あの後、意識を失ったみたいなんだよ」
「……そうなんだ。迷惑かけて……ごめんなさい」

 救急車の中で意識を失ったらしい静。俺には分からなかった。ただ、周りの声がそう言っていたのを聞いているだけだった。


 ……なんて不甲斐ないんだ。


 俺は何も出来ない――静の手を握ってあげる事さえ出来なかった。

「迷惑だなんて思うなよ……。俺なんか毎日、静に迷惑かけている」
「そんな事ないよ。迷惑だなんて思ってないよ」
「それなら俺も迷惑だなんて思ってない」
「……雄太。――ありがとう」

 静は優しく俺に言ってくれた。その声は少し泣いてるように俺の耳に聞こえた。

「でも……静。俺はこれからは、一人で出来るようになりたい」
「雄太……?」

 静の声は少し戸惑っているようだ。でも、俺は言わないといけない。

 伝えないといけない事がある。これ以上無理をして欲しくないから――。

「これからは、出来るだけ一人でやって見たい。俺は静に頼り過ぎていた事が、今日の出来事で実感が出来た」
「雄太……いいんだよ。気にしなくても……」
「駄目なんだ――このままじゃ、俺も静も駄目になってしまうから……」

 俺の声が響いている。

 この部屋は静かだ。俺の呼吸と静の息遣いの二つが聞こえるだけだ。

「だから……静、今までありがとう。もう無理はしなくていいから」
「っ! ……雄太!」

 静の声が聞こえた。その声は悲痛な思いを持っていた。でもこれでいいんだ。

 俺はこれ以上、静を――。

 そう考えていた俺の首に何かが触れた。首に触れたものは、しっかりと俺を包み込む。

 そして俺の肩に感じる重み、耳のそばで聞こえる息遣い――これは静が、抱きついているのか?
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