甘いものには毒を
後ろからやたらと高い声で何かを言って来ていたが、そんな事は気にせず高まった心臓を抑えるために塀に寄りかかる。
呼吸もつられて何度となく早くなり吐き出された息はすごいスピードで消えていくのを見守った。
「ふふふ、今のうちに熱々でもラブラブでもしているがいい」
自然と収まって来た心臓と呼吸の様子を見ながら小さくにやけ、そう呟く。
男が来たジャケットの後ろに書かれた刺繍がやけに強調されたように見られ、内心を映し出しているように思える。
チラチラと降った雪とは全く似合わないそれは、今にも出て来て襲おうとしたかのように恐れをなすものに見えた。
とっとと、家に帰り着いた場所はボロ屋のアパートで、今にも潰れそうな雰囲気が出ているが、潰れない理由は家賃が安いということで入居者が後を絶たないというところにあった。
家賃を払い遅れているせいで、大家さんに文句をひたすら言われ続けているが、気にせずに暮らすその図太さが呆れと諦めを呼び、あまり言われなくなっていった。
一階にある大家さんの家を通り、階段を上るとすぐに見えてくるドアが男の家なのだ。
鍵を軽く入れ、ひねると音がなり小さく軋む。いつものことだからと気にせず部屋に入りすぐのところに置かれた机とパソコンへ飛びつくとひらいた。
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