死後の光

 授業が終わって二人並んで美術室に行くのが私たちの日課だ。
桜の後につづき教室をでて
  ふと 窓の外に目をやると

 野球部が黄色っぽい土のグラウンドを
だるそうに走っている。

 特別強いチームではないけれど、
黒木涼平と山口翔がいることで
 女子マネージャーを希望する女子も多く
 その女マネ目当てで入部する男子もすくなくはない。

 私も女マネになれば良かったかなぁ・・

  と

一瞬 頭の中で考えたが
 大好きな絵を手放してしまったら 
“私に残るものはない”
 と 思って すぐにその考えを頭の中から消し去った。


「あかりちゃん・・?」
 急に桜に声をかけられた

「ん!?」

 気づけば 足をとめて ずっと外を見ていた。
「あ! ボーっとしてた!」

「今日のお昼もそうだったよね?あかりちゃん、何かあったの?」

 心配そうに 見つめる桜。

 彼女の白い肌に見入ってしまう。

「ううん! なんでもないのっ」

「そう?・・ならいいんだけど・・・相談ならいつでものるからね?」

 あまり深く問い詰めないところも彼女の気遣いなのだろう。
 ウン と うなずいて 美術室に入る。

 ツンと鼻につく
油絵の具のにおいがして、むせ返りそうになり
 何度か呼吸をして
やっとなれた。

 今年も・・・

何もないまま 終わって行くんだなぁ・・・。

 そう思うとなんだか
心が痛くなった。

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