帝国レストリジア
まあ、そういう僕もこの剣技場の大会に出ている時点で人の事を言える立場じゃないけど。
ガヤガヤと騒ぐ客を横目に、持っていた剣を腰に収めた。
しかし、裏口入門があると知って半信半疑で来てみたが、それらしき人物は1人もいない。
本当にこんな場所で王宮騎士団へのスカウトがあるんだろうか?
ここまで戦った相手は大して強い敵でもなかった。
強い敵どころか下手すれば、一般兵よりも弱い。
9人切りだとしても、その実力はたかが知れている。
王宮騎士団へのスカウトなら、この大会だけで実力を判断するには、あまりにも情報不足で大きな賭けと言える。
王族もそこまで馬鹿ではない。
だとすると、何か他に策を立てていてもおかしくない。
考え込む僕とは裏腹に、軽快な声のアナウンスが流れた。
「さてさて、次はおまちかねの決勝戦!」
ワァーッと会場が湧く。
「おっと…、Aブロックもそうですが、Bブロックも初挑戦の方が決勝まで上り詰めたようです。これは楽しみですね!では入っていただきましょう!オルディス・ガイ選手!」
アナウンスとともに大きな扉が開いた。
それにつられて、会場中の目が一身にそこに集まる。
ただ、僕だけは何故かその名前に聞き覚えがある事に違和感を感じていた。
オルディス・ガイ…何処かで聞いたことが…。