最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
「いいえ。昨日の夕方まで出張で北海道にいたんです。そこから小松に飛行機で移動して電車で福井に来たんですよ」
慧の話では、着いたのが夜遅かったので、昨夜は祖父母の家に泊まったらしい。
慧が私にくれたくまのぬいぐるみは、駅の近くにあるお店で買ったとか。
食事を終えると、そのまま病院から三キロほど離れたところにある私の実家へ三人で向かった。
九年ぶりに見る我が家は、少し変わっていた。
ボーッと玄関前で突っ立っている私に、兄が優しく声をかけた。
「外壁を変えたんだ」
私がいた頃は赤レンガの家だったのだが、今は真っ白で自分の家じゃないみたいだ。
兄が家のドアを開け、にっこり微笑む。
「さあ、どうぞ」
私が育った家。
裕福だったけど、温かみのない家だった。
寂しくて、冷たい……そんなイメージしかない。
入るのを躊躇う私の背中を、慧がそっと押す。
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