最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
私は学生時代の兄しか知らない。
勉強もスポーツも出来て、オールマイティーな人だった。
周囲にいた人は『自慢のお兄さんだね』って言ったけど、私にとっては他人以上に遠い人で……。
昔の面影はあるが、今はスーツ姿だし、兄に似た人を見ている気分だ。
こうして目の前にいることに妙な圧迫感を覚える。
手には汗が滲んできた。
気の利いた会話が浮かばず黙り込む私。
兄も何も話さずテーブルの上で手を組む。
店員が水とメニューを持って来ると、ホッとした。
「拓人さん、何にしますか?サラダと飲み物付きのセットもありますけど」
兄を名前で呼んでいるのは、昔『お兄ちゃん』と呼んでひどく怒られたから。
敬語を使っているのも、兄がそうするように命じたからだ。
『お前は下僕だ』って小学生の頃何度言われただろう。
私は妹扱いされたことなんてなかった。
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