最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
そう呟きながら、日記をパラパラとめくる。
書いたのは二十七年以上前なのに、書かれていた文字はくっきりしていて、まるで最近のものみたいだ。
線が細くて綺麗な字。
悪阻が酷かったとか、お腹の子が動いたとか、一日二、三行くらい書いてある。
エコーの写真も一枚貼ってあって、それは赤ちゃんの姿がわかるものだった。
「これが……私」
「日記の最後の方には、自分に何があってもお前を産むって書いてあった。……ずっとお前に謝らなければって思ってた。でも……なかなかきっかけがなくて……。ごめん」
兄はどこか思い詰めた表情で謝ると、深々と頭を下げる。
演技には見えなかった。
私も苦しかったけど……兄も苦しかったんだ。
立場が逆だったら、私も同じように責めていたかもしれない。
兄は母を知っていただけに、その喪失感も大きかっただろう。
過去は変わらない。
< 97 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop