最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
"はい"とは答えられなかった。
あの家は私にとっては辛い思い出しかない場所。
あそこに帰って正気でいられる自信はない。
過去の弱い自分に負けて……暗い闇に飲み込まれてしまいそうだ。
「……ごめんなさい。まだ先のことだし、ちょっとわからないです」
俯いて言葉を濁すも、兄は諦めない。
「お前の部屋もそのままに……!?」
「東雲さん!」
兄の言葉を遮り、慧が割って入って来た。
お昼は社長とランチミーティングだったはず。
どうして慧がこの店にいるの?
彼の突然の登場に呆気に取られる私。
「彼女に何か?」
慧は紳士スマイルで兄に問いかけるが、その目は鋭い。
何か誤解しているようなので、慧のスーツの袖を掴んで声をかけた。
「……私の兄なんです」
「お兄さん?」
慧は大きく目を見開き、まじまじと兄を見た。
< 99 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop