独占欲強めな同期の極甘な求愛
「あの、三井さん、ここでけっこうです。あとは歩いて帰れます」
よくよく考えたら臣ももういないんだし、本当に駅まで送ってもらう必要なんてないんだ。ならばここでサヨナラだ。
「ありがとうございました。では私はこれで。お疲れ様でした」
「どうしたの、急に。駅はまだ先だよ?」
だけど三井さんはしつこくついてくる。いつもみたいに素っ気なくしてくれていいのに。戻ればいいのに。私の知っている三井さんは約束を守るようなそんな律儀な人ではない。
背後から何度も私を呼ぶ三井さんを無視しずんずんと俯き加減で突き進む。それでも追ってくる三井さんの気配がする。しつこいなぁ、どうして戻らないの?
「白鳥さん、前! 危ない!」
すると三井さんの切羽詰まったような声が聞こえ、ハッとして顔を上げる。だけど時すでに遅く、前から走ってきた自転車とぶつかりそうになった。お酒のせいで反射神経が鈍っているのか、なんとか避けたものの、思いっきりぐらついてそのまま壁にもたれるように倒れこんだ。
と、同時に反動で、カシャッとメガネがコンクリートに落ちたのがわかった。慌てて拾おうとするも動揺していたこともあり、私はそれを盛大に踏んづけてしまったのだ。
う、嘘……! と思いたかったが、足元にはぐにゃりとした違和感がある。
「あらー、自分のメガネ踏んじゃってるよ。白鳥さん」
三井さんに言われ恐る恐る確認してみると、やはり私の足元には無残な形に変貌していた愛用のメガネがあった。フレームは歪み、レンズにはヒビ。ショックで声を失ってしまう。