犬猫ポリスの恋日常

夕方六時。お祭りの始まりを知らせる音が“ドーン”と町中に鳴り響く。

千歩は祖母に浴衣の着付けをしてもらい、雑誌で見た髪型を整えてから再び居間へ現れた。

いつも冷静な秋人だって、初めて恋人の浴衣姿を見ればそれなりに驚くはずだ。

千歩は期待で胸躍った。

「秋君、私の浴衣姿どうか――…」

秋人と対面した千歩は言葉を失う。

こんなのは反則だ!と心の中で絶叫した。

「やっぱり秋人君って何着ても様になるわね!私の目に狂いは無かったわ!」

母は自分が仕上げた秋人の着付けにドヤ顔をする。

秋人は黒い男性用浴衣を着て、竹細工の和風うちわを手にしている。

褒められて、照れ臭そうに苦笑い。

秋人が警察官になりたての頃、制服を着て交番で働く彼を見て鼻血を噴きそうになったのを千歩は思い出した。
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