恋しくば

こういう時、あたしは辻本じゃなくて良かったと思う。もしも辻本がここでバイトをしたなら、個人情報を全て話してしまいかねない。
なんて、もしも辻本だったらこんな所で働くわけがないか。

大抵ニコニコして、先輩たちの話の邪魔にならず、お酒を作ったりしていれば時間は過ぎる。
時給が良いにしろ、長く続ける予定はなくて、ノルマが課せられる前に辞める。

ドレスが無料貸与のところで本当に良かった。こんなの自分で買ってくれと言われても困るし。
そんなことを考えていると、隣にボーイがすっと近づいてきた。

「マコさん、ご指名です」

……はい?

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